田舎暮らしでは、家賃や土地代を抑えられるイメージがあります。しかし、車の維持費、冬の暖房費、空き家の修繕費などが増え、必ずしも都市部より生活費が安くなるとは限りません。

移住後の生活費は、世帯人数、地域、住宅の状態、車の台数によって大きく変わります。「田舎なら月10万円で暮らせる」といった情報をそのまま当てはめず、自分の条件で計算することが重要です。

本記事では、田舎暮らしで必要になる生活費と、地方移住前に収支を試算する方法を解説します。

田舎暮らしの生活費はいくら必要か

総務省統計局の2025年家計調査では、1世帯当たりの月平均消費支出は、単身世帯で173,042円、二人以上の世帯で314,001円でした。

ただし、この数字は全国を対象とした平均であり、世帯主の年齢、世帯人数、持ち家の割合なども影響しています。田舎暮らしに必要な生活費をそのまま示すものではありません。

自分に必要な金額は、現在の生活費を基準に、地方移住によって増える支出と減る支出を反映して計算します。

田舎暮らしで減る可能性がある支出

住宅費

都市部と比べて、地方では家賃や中古住宅価格を抑えられる場合があります。空き家バンクでは、一般の不動産情報サイトに掲載されていない低価格物件が見つかることもあります。

ただし、物件価格が安くても、修繕費、固定資産税、火災保険、浄化槽管理費などは別に必要です。

駐車場代

敷地内に駐車できる戸建てなら、都市部で支払っていた月極駐車場代を抑えられる可能性があります。一方、車を新たに購入する場合は、駐車場代の減少以上に維持費が増えることがあります。

外食・娯楽費

飲食店や娯楽施設を利用する回数が減れば、外食費や交際費を抑えられます。ただし、選択肢が少ないことで都市部への移動やインターネット通販が増え、別の支出が発生する場合もあります。

田舎暮らしで増えやすい支出

費目増える主な理由
交通費車の購入・維持、長距離移動
光熱費広い住宅、寒冷地の暖房
住宅修繕費築古住宅、屋根、配管、設備
通信費固定回線と携帯回線の併用
帰省・旅行費都市部や実家までの移動
宅配・送料店舗が少ない地域での通販利用

車の維持費を忘れずに計算する

公共交通が少ない地域では、通勤、買い物、通院に車が必要です。世帯によっては、夫婦で1台ずつ所有することもあります。

車にかかる費用

  • 車両購入費またはローン
  • 自動車税・軽自動車税
  • 自動車保険
  • 車検・点検・修理
  • 燃料代
  • タイヤ・オイルなどの消耗品
  • 寒冷地の冬用タイヤ
  • 高速道路・駐車場料金

車両購入費は月割りで考える

購入時に現金で支払った場合でも、車両代が無料になるわけではありません。購入価格から売却見込額を差し引き、使用する年数で割ると、毎月の実質的な負担を把握しやすくなります。

例えば車を8年間使う予定なら、購入費だけでなく、8年間に想定される税金、保険、車検、修理まで合計して比較します。

光熱費は住宅と気候で大きく変わる

田舎の戸建ては、都市部の集合住宅より床面積が広く、外気に接する面も多いため、冷暖房費が増える場合があります。特に古民家や築古住宅では、断熱材や複層ガラスが使用されていないことがあります。

確認したい光熱費の条件

  • 住宅の広さと断熱性能
  • 窓の種類と数
  • 暖房に使う電気、ガス、灯油、薪
  • 給湯器の種類と使用年数
  • 上下水道、井戸、浄化槽の区分
  • 地域の最低気温と積雪量

物件の売主や前所有者から、過去の電気・ガス・灯油使用量を確認できれば参考になります。ただし、世帯人数や生活時間が違うため、同額になるとは限りません。

安い空き家ほど修繕費を確保する

空き家を購入する場合は、購入時のリフォーム費だけでなく、入居後の修繕費も必要です。屋根、外壁、給湯器、浄化槽などは、将来交換時期を迎えます。

住宅費に含めたい項目

  • 購入代金または家賃
  • 仲介手数料・登記費用
  • 固定資産税
  • 火災保険・地震保険
  • 入居前の改修費
  • 定期的な修繕積立
  • 庭木・草刈り・除雪
  • シロアリ対策

当ナビで全国の空き家データを確認していると、物件価格が低いほど魅力的に見えますが、生活費への影響が大きいのは購入価格より建物状態であることも少なくありません。価格と修繕費を分けず、住める状態にするまでの総額で比較する必要があります。

食費は田舎だから安いとは限らない

直売所や家庭菜園を利用すれば、季節の野菜を安く入手できる場合があります。一方、競合する店舗が少ない地域や離島では、加工食品、日用品、燃料などが都市部より高いこともあります。

食費を確認する方法

  1. 移住候補地のスーパーを訪れる
  2. 普段購入する商品価格を記録する
  3. 店舗までの交通費を加える
  4. ネットスーパーと配送料を調べる
  5. 冬季も同じ方法で購入できるか確認する

家庭菜園にも、種苗、肥料、農具、防虫対策、水道、獣害対策などの費用と作業時間が必要です。収穫した作物をすべて食費の節約として計算するのは避けましょう。

移住時には毎月の生活費以外も必要

地方移住では、毎月の支出とは別にまとまった初期費用が発生します。

初期費用具体例
引っ越し運送、梱包、不用品処分
住居契約費用、登記、改修
購入、登録、冬用タイヤ
家具・家電暖房、除湿器、照明など
仕事就職までの生活費、通信設備

補助金や移住支援金を利用できる場合でも、後払いとなる制度や対象経費が限定される制度があります。支給前に必要な資金を用意してください。

移住後の生活費を試算する手順

1.現在の支出を3か月記録する

家賃、食費、光熱費だけでなく、保険、税金、車検などの年払い費用も月割りで記録します。

2.移住でなくなる支出を差し引く

現在の家賃、月極駐車場、通勤定期券など、移住後に不要になる費用を整理します。

3.地方で増える支出を加える

車、暖房、住宅修繕、帰省、除雪など、移住先特有の費用を加えます。

4.予備費を確保する

車や給湯器の故障、急な通院、収入減少などに備え、毎月の予備費と生活防衛資金を確保します。

5.収入が減った場合も計算する

地方転職によって給与が下がる可能性がある場合は、希望年収ではなく、実際の求人で提示される給与を使って収支を確認します。

お試し移住中に実際の支出を記録する

移住体験住宅などを利用し、食料品、交通、灯油、日用品にいくらかかるか記録すると、机上の計算より現実的な生活費を把握できます。

観光目的の外食や土産代は分け、移住後の日常生活に必要な支出だけを集計するのがポイントです。

まとめ:住宅費だけでなく年間の総支出で比較する

田舎暮らしでは住宅費を抑えられる可能性がありますが、車、暖房、修繕、帰省などの支出が増えることがあります。家賃や物件価格だけを見て「生活費が安い」と判断するのは危険です。

現在の家計を基準に、移住によって減る費用と増える費用を項目ごとに計算してください。税金、保険、車検、住宅修繕などの年払い費用も月割りで含めます。

移住前にお試し滞在を行い、実際の物価や交通費を確認することで、より現実的な生活費を把握できます。