空き家や格安戸建ての広告では、「利回り20%」「数年で投資資金を回収」といった数字を見かけることがあります。しかし、その多くは物件価格と想定家賃だけで計算した表面利回りです。

築古の空き家では、購入後に修繕費、残置物撤去費、登記費用、固定資産税などが発生します。空室や家賃滞納も考慮すると、実際に手元へ残る収益は表面利回りより低くなるのが一般的です。

本記事では、空き家投資における利回りの計算方法と、購入前に作成したい収支シミュレーションを解説します。

空き家投資で使われる3つの収益指標

指標分かること主な用途
表面利回り物件価格に対する年間家賃の割合候補物件の一次比較
実質利回り諸費用を含めた実際の収益性購入判断
投資回収年数投資資金を何年で回収できるか資金計画とリスク確認

候補物件を探す段階では表面利回りも便利ですが、最終判断では実質利回りと投資回収年数を確認する必要があります。

表面利回りの計算方法

表面利回りは、年間家賃収入を物件の購入価格で割って計算します。

表面利回り=年間想定家賃収入÷物件価格×100

表面利回りの計算例

物件価格300万円、月額家賃5万円の場合は次のようになります。

  • 年間想定家賃:5万円×12か月=60万円
  • 表面利回り:60万円÷300万円×100=20%

数字だけを見ると高利回りですが、この計算には購入諸費用、修繕費、管理費、税金、空室が含まれていません。

表面利回りが高く見える理由

格安戸建ては分母となる物件価格が小さいため、表面利回りが高くなりやすい特徴があります。しかし、物件価格が100万円でも、修繕に400万円かかれば、実際の投資額は500万円以上です。

広告上の利回りが高いことと、実際に利益が出ることは同じではありません。

実質利回りの計算方法

実質利回りは、年間家賃収入から運用経費を差し引き、物件を運用できる状態にするまでの総投資額で割って計算します。

実質利回り=(年間家賃収入-年間運用経費)÷総投資額×100

総投資額に含める費用

費用主な内容
物件購入費土地・建物の代金
取得諸費用仲介、登記、税金、司法書士
修繕費屋根、外壁、水回り、内装、設備
撤去・整備費残置物、庭木、害虫、清掃
募集準備費広告、写真、保証会社、鍵交換

年間運用経費に含める費用

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険・地震保険
  • 管理会社への委託費
  • 入居募集・契約に関する費用
  • 共用設備や浄化槽などの維持費
  • 修繕に備える積立金
  • 草刈り、除雪、定期巡回
  • 空室期間中の電気・水道など

表面利回り20%の物件を実質計算する

先ほどの物件を、次の条件で計算します。

項目金額
物件価格300万円
取得諸費用40万円
修繕・残置物撤去260万円
総投資額600万円
年間想定家賃60万円
年間運用経費15万円
年間手残り45万円

実質利回りは、45万円÷600万円×100=7.5%です。広告上の表面利回り20%と比べると、大きな差があります。

これは単純化した例であり、所得税、住民税、借入金の返済、減価償却などは含めていません。実際の税引後収支は、所有者の状況によって異なります。

空室率を含めて家賃収入を考える

年間家賃を12か月分で計算すると、常に満室であることが前提になります。地方の戸建てでは、退去後に次の入居者が決まるまで数か月かかる可能性があります。

稼働率別の年間家賃

稼働率月額5万円の場合の年間家賃
100%60万円
90%54万円
80%48万円
70%42万円

収支計画では、満室の想定だけでなく、稼働率80%や70%でも赤字にならないかを確認しましょう。

空室が長期化しやすい条件

  • 人口・世帯数が減少している
  • 勤務先や学校から離れている
  • 駐車場がない、または道路が狭い
  • 家賃が周辺相場より高い
  • 水回りや断熱性能が入居者の需要に合わない
  • 管理会社の対応エリア外になっている

投資回収年数の計算方法

投資回収年数は、総投資額を年間の手残りで割って計算します。

投資回収年数=総投資額÷年間手残り

総投資額600万円、年間手残り45万円なら、単純計算で約13.3年です。ただし、この期間中に追加修繕、空室、家賃下落が発生すると、回収期間は長くなります。

回収期間中に想定したい支出

  • 給湯器・エアコンなどの設備交換
  • 屋根・外壁の追加修繕
  • 退去時の原状回復
  • 家賃滞納や残置物への対応
  • 災害による損害と保険の免責額
  • 売却時の仲介手数料や測量費

利回り以外に確認する指標

利回りは物件収益を比較するための重要な数字ですが、地域需要や建物リスクまでは示しません。

確認項目判断する内容
人口・世帯数住宅需要が維持されるか
借家比率賃貸住宅が利用される地域か
就業者数家賃を負担する層がいるか
空き家率物件供給と競合の多さ
木造戸建て数戸建て市場の厚み
生活施設入居者が暮らしやすいか

当サイトでは全国1,741市区町村の統計を比較していますが、地域のスコアが高くても、個別物件の収益性を保証するものではありません。統計で候補地を探した後に、物件ごとの収支を計算する必要があります。

購入前に作りたい3つの収支パターン

  1. 標準ケース:想定家賃と通常の修繕費で計算する
  2. 慎重ケース:家賃を下げ、空室と追加修繕を見込む
  3. 撤退ケース:賃貸できない場合の売却・解体費を計算する

慎重ケースでも資金を維持でき、撤退ケースでも致命的な損失にならない物件かを確認します。表面利回りの高さだけでなく、想定が外れたときに耐えられるかが重要です。

まとめ:物件価格ではなく総投資額で判断する

空き家投資では、物件価格が安いほど表面利回りが高く見えます。しかし、修繕費、取得諸費用、空室、税金、管理費を含めると、実質利回りは大きく下がる場合があります。

候補物件を見つけたら、表面利回りだけでなく、総投資額を基準にした実質利回りと投資回収年数を計算してください。満室、空室、追加修繕の複数パターンを作り、それでも継続できるかを確認してから購入を判断しましょう。

※本記事の計算例は一般的な考え方を示すもので、投資成果を保証するものではありません。税務・融資・契約については、税理士、金融機関、不動産会社などへ確認してください。